日本語教師はより日本を知ることが大事(体験談)

執筆者:杏 40歳 女性 経験年数1年

日本についてのさまざまな質問

私は日本語教師として教壇に立つ前、自分はただ日本語を教えさえすれば、それでいいのだと思っていました。

ですから授業前には文法をよく分析し、日本語で教える「直説法」で教えられるように例文を考え、集め、訓練しました。

でも日本語学校には、日本に興味を持った人たちがやってきます。

そして日本のことは日本人なら当然知っていると思い、さまざまな質問を投げかけてきます。

次の質問は実際に学生たちから質問されたものです。

「東京の人口は何人?」「エッフェル塔と東京タワーはどっちが高いの?」「日本で一番大きな大学はどこ?」「日本の大使館はどこにあるの?」「信濃川ってどこ?」

教科書には日本や、世界各地の地名が出てくることがよくあり、教室にはたいてい世界地図と日本地図が貼ってあり、場所を示すように言われることがあります。信濃川は日本で一番長い川です。

何を質問されてもいいように、授業準備では聞かれそうなことはすべて調べて臨みます。

ですが、彼らにとっては何か関連のある大事な質問でも、こちらにとっては突拍子もない質問であることが多く、うっかり忘れているものもあります。

中国人はわからない言葉が出てくると、すぐに漢字で書くように言ってきますが、普段書いている漢字がとっさに出てこないこともありますし、

最近はパソコンや携帯で文字のやり取りをすることが多いです。文字を書かないでいると、漢字を忘れます。

着付けができない

私の勤めている学校では、日本の文化を体験する機会が年に何度かあります。茶道、華道、書道、浴衣着付け体験…。

昔の日本人はたしなみとしてどれも体験していたかもしれません。

でも今は、ほとんどの日本人にとっては、知ってはいるけれど、正式には勉強したことのないものばかりではないでしょうか。

しかし、外国人の学生たちにとっては、どれも興味深い、体験したい日本の文化ばかりです。

憧れの日本の文化を体験できる貴重な時間として、体験授業中は真剣そのものであることが伝わってきます。

私にとって初めての着付け体験の授業のときのこと、私は補助として教室に入っていました。

授業では着付け専門の先生が前に立ってやってくださるので、自分の役目はわからない日本語をわかるように伝え、彼らが着付けの先生の指示通りに着られるように言葉を手伝うことだと思っていました。

ですが、初めての着付けを外国人が見てすぐに着られるようになるはずもなく、私も着付けを手伝わざるを得なくなりました。そして、それは私にもできませんでした。

見よう見まねで着付けても、全てやり直さなくてはならない状態になり、最後には学生から「NO」あなたは手伝わなくていい。と、言われました。

幸い着付けの授業は2回あり、その間、私が必死に家で着付けを練習したことは言うまでもありません。

おかげで着付けができるようになり、洋服ダンスの中には浴衣が一つ増えました。

日本の文化に誇りを持つ

私は日本の文化をしっかりとは知りませんでした。

社会人として普通に生活してはきたものの、日本の伝統文化にはまったく触れない生活を送ってきました。それで支障はありませんでした。

でも、この仕事を通して、着付けを覚え、生花をたしなみ、日本の人口、東京の人口、地理、歴史を頭の中にしまいこみ、今、教壇に立っています。

卒業式や文化祭のとき、ネパールの学生たちはだいたい皆、民族衣装を着てきます。そしてそれを着ているときの彼らの顔はとても誇らしげです。

彼らは、自分の国の文化に対して、知っているというよりも誇りがあるように見えました。

日本を知るということは、日本の文化に誇りを感じていることなのではないかと思いました。

私はこの仕事を通して、もう一度日本人の心を取り戻したように思います。

仕事体験談