漫画家の仕事で大切にしていること

約束を守ること

当たり前ですが、約束を守ることは大切です。

実は、漫画家になる人でもこれができない人がたくさんいます。せっかく才能があるのに、こうした当たり前のことをできなかったがために消えていってしまった人は、数えきれないほどいます。

普通のビジネスマンに比べて、漫画家などのクリエイティブ系の職業に就く人々のなかには、こうしたことが苦手な人もいます。

それもそのはずで、「創作」というのは、子どもに戻ることが重要だからです。

子どもでありながら、大人でもある。そうした複雑なバランス感覚が、プロの漫画家には求められます。

難しいことですが、逆に言うと、漫画の才能だけですべてが決まるわけではないということで、才能に自信がない人にとっては、むしろ励みかもしれません。

自分のタッチを大切にする

実は、成功している漫画家は絵がうまいとは限りません。もちろん誰もが認めるうまい人もいますが、下手でも成功している人はたくさんいます。

これらの人に共通しているのは「自分のタッチを大切にしている」ということです。

漫画家は、「どんな絵でも描ける」という必要はないのです。

絵全般はそれほど上手くなくてもでも、「自分のタッチだけ」使いこなせていれば、それでいいのです。

たとえば「クレヨンしんちゃん」の臼井儀人先生の場合、あのシンプルな絵だけを描ければよかったわけです。

漫画家志望者の高校生などがやるような、ありとあらゆる漫画家のタッチをコピーするという作業は、臼井先生には必要なかったわけです。

「何でも描ける人」なんていうのは、漫画家の世界でもほとんどいないし、目指す必要もないので、まずは自分のタッチを極めること。それを大切にしています。

相手の立場になりきる

「約束を守る」もこの延長にあるのですが、ネタを考えたり、絵の構図を考えたりする技術的な場面でも、こうした「相手の立場になりきる」というのは重要になります。

たとえば書籍の仕事で「この文章にあった1コマ漫画をつけてくれ」と言われた時は、著者の気持ちになります。

著者がその文章で伝えたかったことを汲み取り、次に読者の気持ちになります。

「著者は何を伝えたいか?」「読者は何を知りたいか?」を考えた上で、双方のニーズを満たすような漫画を考えます。

こうした「相手の立場になりきる」ということは、仕事の交渉などだけでなく、作業中も意識しています。