救急救命士になるには? 必要な資格は?

救急救命士になるまでの道のり

救急救命士は国家資格です。

そのため、救急救命士として働くためには、救急救命士国家試験に合格することが必要です。

この試験は誰でも受けられるわけではなく、決められたルートをたどって「受験資格」を得なくてはなりません。

受験資格を得るための代表的な方法のひとつが、救急救命士法34条で定められた「救急救命士養成校」で、所定の単位を習得することです。

なお、救急救命士の勤務先のほとんどが消防署であるため、そこで働くためには、消防官採用試験にも合格しなくてはなりません(消防署以外に、自衛隊、海上保安庁、警察などで活躍する救急救命士もいます)。

消防官採用試験というのは、地方公務員試験のことを指しており、自治体や試験の種類によって難易度が異なってきます。

救急救命士になるためのルートは2つあります。それぞれについて、ここから詳しく紹介します。

救急救命士になるまでのルート

1.「2年制」の救急救命士養成校を卒業する

・高校を卒業後、救急救命士養成所で2年間学び、救急救命士国家試験を受験して合格する
・消防官採用試験を受けて合格する

※救急救命士の国家資格が取れても、消防官採用試験に合格しなければ救急救命士として働くことはできません。

2.資格取得前に消防署へ勤務する

・大学、短大、専門学校を卒業後、消防署の消防官採用試験を受けて合格し、消防署で消防隊員として勤務をする

・6ヶ月以上養成校で救急業務に関する講習を受ける
・5年以上または2000時間以上救急業務を経験し、救急救命士国家試験を受験し合格する

※救急救命士の資格がなくても、救急車に同乗することは可能です。

消防署で働く救急救命士は地方公務員

いずれのルートにおいても、救急救命士有資格者のほとんどは消防署で勤務しており、消防官採用試験に合格して消防官になる必要があります。

消防官は「地方公務員」ということからも人気があります。

各自治体で採用試験の倍率は異なりますが、10倍前後と高くなっており、難関であることを覚悟しておいたほうがいいでしょう。

自治体によっては救急救命士資格取得者を優先的に採用する枠を設けているところもあります。

そうした自治体を探して受験するのも一つの手段です。

救急救命士の資格・難易度

救急救命士として業務をおこなうためには、国家試験に合格する必要があります。

2021年におこなわれた試験の合格率は、91.3%となっており、例年80%以上の合格率を維持しています。

合格率が高いため難易度が低いと思われがちですが、受験生はきちんと勉強をし、受験対策をおこなってきているため、この結果となっていると考えたほうがよいでしょう。

また、救急救命士国家試験を受験するにあたって、事前に取得しなければならない資格などはありません。

そのため、救命士国家試験と消防官採用試験の合格をいちばんに考えた勉強のスケジュールを組むようにしましょう。

補足として、消防官採用試験時に持っておいたほうがいい資格に、「大型自動車免許」や「第3級陸上特殊無線技士」などがありますが、あくまでも補助的なものとして理解しておきましょう。

救急救命士国家試験の難易度・合格率

救急救命士になるための学校の種類

救急救命士になるための学校にはいくつかあり、おもに専門学校と大学があります。

そのため、入学条件は基本的には高卒以上ということになります。

専門学校では、2年~3年かけて救急救命士国家試験にむけた対策と、消防官採用試験の対策をおこなうことを目的としています。

大学については、4年間という期間のなかで、いろいろなカリキュラムに取組みながら、救急救命士を目指していくことになります。

救急救命学科や保険医療学科など、さまざまな名称がありますので、事前にどの学科で救急救命士を目指すことができるのか、きちんと確認しておきましょう。

また、専門学校と大学では必要になる学費に差があり、4年間通う必要があることから、大学のほうが高額になるケースがおおいです。

専門学校だと、約110万円~150万円(初年度)ほどで、大学だと約130万円~200万円(初年度)ほどかかる計算になります。

事前に、進学先の学校で受けられる奨学金制度などを確認するようにしましょう。

救急救命士になるための学校と学費(大学・専門学校)

救急救命士に向いている人

人を助けたいという気持ちが強い人

救急救命士になるうえで必要な心構えとして、「人の命を助けたい」という気持ちを強く持ち、あきらめずに行動ができる使命感や責任感が必要です。

24時間交代制(シフト制)のため大変な仕事ですが、その中でも自分の仕事に責任を持ち最後までやり遂げるだけの根性が必要になります。

また、医師やその他医療関係者と連携して傷病者の処置にあたる必要がありますので、チームワークを大切にできなければ務まりません。

個人のスキルも必要ですが、チームで動くことを念頭に置き、行動する必要があります。

ものごとを冷静に判断できる人

救急救命士の出動先となる現場は常に緊急を要する状態であり、どんな状況でも冷静に行動できる判断力が必要です。

時間との戦いのなか、どのような処置が適切かを判断・行動し、突然の事態でもパニックにならずに対応していく力が求められます。

また、救急救命士は医療機器を使用して傷病者の対応をおこないますので、機器の知識や使用方法など、常に意識を集中させた状態で保たなくてはいけません。

早朝や深夜など、時間を問わず出動することが多いため、集中力を持続させることができるかどうかが大切となります。

体力と精神力に自信がある人

人の生死の現場に立ち会うことが多いため、肉体的・精神的に強くなければ務まらない仕事です。

傷病者のもとに駆け付け、搬送をおこなうためには、相応の体力が必要となります。

ですので、救急救命士(消防官)は、訓練として体力づくりに励んでいるのです。

24時間交制(シフト制)のため、体の状態をキープする自己管理能力が必要不可欠であり、日頃からのケアが重要となります。

また、悲惨な現場や状態の傷病者に接しなければいけない場合もあるため、精神力に自信がないと厳しい面もあります。

救急救命士に向いている人・適性・必要なスキル

救急救命士のキャリアプラン・キャリアパス

救急救命士として実務経験を重ねたのち、各地消防学校などで研修を積み、「薬剤投与認定」や「特定行為認定」などの関連資格を取得することで、さらにスキルアップを図ることができます。

こうした追加資格は近年認定された「特定行為」、なかでも気管の挿入や一部薬剤の投与などの医療行為を行う際に不可欠なものとなっています。

そのため、多くの救急救命士は業務の合間をぬって勉強し、資格取得を目指しています。

救急救命士になってからもスキルアップのために努力していけば、その分だけ携われる業務は広がっていいきます。

特定行為に該当する処置をおこなう場合、医師からの具体的な指示と家族への説明と同意が必要となりますので、医師のように処置全般をおこなえるわけではありません。

救急救命士の今後の見通し

救急救命士に認められている「特定行為」には、都度医師からの指示が必要であり、処置できる行為も制限されます。

しかし、近年では「特定行為を拡大することによって救える命もある」という主張が強まっており、検討が進んでいます。

救急救命士がおこなう特定行為の範囲には、まだまだ課題があり、「救急救命士が医療行為をおこなえるのが車内のみに限定されていること」などが議論の対象となっています。

ですが、徐々に特定行為の拡大へ議論は進んでいるため、今後も救急救命士が担う責任は重くなっていくことが予想されます。

救急救命士の資格を有する消防隊員は年々増加しています。令和3年時点で救急救命士の資格を持つ人は41,266人。

そのうち救急救命士として運用されている救急隊員は28,722人と年々増加しています。

救急救命士運用隊の推移_令3

出所:総務省消防庁 令和3年版 消防白書

令和3年度時点で救急救命士を運用している救急隊は5,275隊で、これは全救急隊のうち99.5%に相当します。ほぼすべての救急隊で救急救命士が活躍しているといえます。

救急救命士運用隊の推移_令3

出所:総務省消防庁 令和3年版 消防白書

救急救命士を目指せる年齢は?

救急救命士を目指せるリミットは、おおよそ29歳までといわれています。

その理由として、救急救命士の資格を取得したからといって、それだけで働くことができるわけではなく、消防官になるための試験(公務員試験)を受け、合格する必要があるからです。

この公務員試験の年齢制限が、多くの自治体で、29歳未満という制限がかかっています。

救急救命士を目指すためには、救急救命士養成校で2年ないし3年間勉強するか、消防官としての実務経験と講習を受けるかのどちらかになるため、最速でも2年間の勉強時間を要することになります。

そのため、最短で2年と仮定したうえで、学校卒業時に29歳未満であれば、まだチャンスが残されているということになります。

※年齢制限については自治体によって異なりますので、希望の自治体の条件などを確認しましょう。