救急救命士と看護師の違いは? 仕事内容や資格の違いについて解説

看護師と救急救命士の仕事内容の違い

看護師の最も基本といえる仕事は、傷病者に対して医療行為をおこなうことです。

ケガの応急処置から薬剤の投与など幅広く対応し、手術の際には、執刀医のサポートをします。

また、術後の患者さんの身の回りのサポート、ケガのケアやリハビリなども仕事に含まれます。

医療機関では、カルテの作成・整理、医療保険の適応処理などの事務作業をおこなうことも多いです。

それに対して救急救命士は、傷病者のなかでも心肺停止状態のケースを扱います。

心肺停止状態の傷病者は蘇生が遅れると脳に深刻なダメージを残してしまうことがあり、まさに一分一秒を争う状態です。

そうした傷病者の蘇生・応急処置を行いつつ、適切な医療機関まで搬送することを役目とします。

簡単にまとめると、「看護師は医療機関で治療やそのサポートをすること」「救急救命士は応急処置をしながら医療機関まで搬送すること」がおもな仕事となります。

現場で働くうえでは、どちらの職業も患者さんの処置をおこなう点では共通していますが、救急救命士は看護師よりも緊急的な処置に特化した知識・技術を身につける必要があります。

看護師の仕事

看護師と救急救命士のなる方法・資格の違い

看護師として働くためには「看護師免許」が、救急救命士として働くためには「救急救命士」の資格がそれぞれ必要です。

どちらも国家資格であり、看護師の場合は看護師養成課程のある学校で学ぶ必要があり、以下いずれかの学校へ通う必要があります。

  • 4年制大学
  • 短期大学
  • 専門学校

4年制大学の場合は看護師資格のほかに、助産師保健師の資格に挑戦することができる大学があるのも特徴です。

救急救命士も看護師同様、以下の学校で学び、救急救命士国家試験に合格する必要があります。

  • 4年制大学
  • 短期大学
  • 専門学校

看護師の場合、免許取得後はおもに病院を中心とする医療機関へ就職してスタッフとして働きます。

一方、救急救命士のほとんどは消防署で働くため、資格取得後に消防官採用試験を受けて消防官になる必要があります。

一部の人は、国家資格取得前に消防官となり、消防署で勤務しながら講習の受講や所定の実務経験を積み、救急救命士国家試験を受験する道をたどります。

看護師と救急救命士の資格・必要なスキルの違い

厚生労働省が発表した、2020年の看護師国家試験と救急救命士国家試験の合格率は、以下のとおりです。

  • 看護師:94.7%
  • 救急救命士:87.0%

看護師国家試験の難易度・合格率

数値だけを見ると救急救命士の難易度が高めに見えますが、看護師国家試験の受験者数が65,568人なのに対し、救急救命士国家試験の受験者数は2,960人と大きく異なるため、一概に比較することはできません。

また、看護師・救急救命士ともに、専門的な知識を学びしっかりと試験対策をおこなったうえでの合格率になりますので、難易度の高さを合格率だけで判断するのは難しいところです。

強いてあげるなら、救急救命士として働くためには、消防官採用試験に合格しなければなりませんので、看護師に比べると、乗り越えるべきハードルが2つある大変さがあります。

看護師と救急救命士の学校・学費の違い

看護師・救急救命士ともに大学・短期大学・専門学校のいずれかで勉強し、国家資格を取得する必要があります。

>学校によって学費には大きな差があり、4年制大学と専門学校で学費を比べてみると、おおよそ以下のようになります。

<看護師>

  • 4年制大学(国公立:約250万円 私立:約450~700万円)
  • 専門学校(国公立:約60万円  私立:約250万円)

※専門学校は3年間の総額です。

<救急救命士>

  • 4年制大学(私立:約700万円)
  • 専門学校 (私立:約250~400万円)

※専門学校は2年または3年の金額です。

上記から分かるように、4年制大学でも国公立と私立では学費が大きく異なり、専門学校は約250万円以上必要となります。

各学校によって、独自の奨学金制度をもつところもありますので、入学を検討している学校に確認をしてみるとよいでしょう。

看護師と救急救命士の給料・待遇の違い

看護師の平均年収は約450~500万円といわれていますが、正看護師・准看護師の違いで、給料に差が生じてきます。

一方、救急救命士の平均年収は約500~600万円程度といわれており、救急救命士の多くが消防署で勤務をおこなうため、地方公務員と同等の給料になります。

救急救命士は地方公務員となるため、公務員としての安定性や良い待遇の下に働けることは魅力のひとつでしょう。

給与は同年代・同じキャリアで比較すると、勤め先によって給与体系が異なるため一概にはいえませんが、平均で5万円〜15万円前後の差があり、看護師のほうが高給といわれています。

しかし、救急救命士の場合は24時間体制での勤務となるため、早朝・夜間の勤務に準ずる超過勤務手当や夜勤手当が上乗せされる形になります。

看護師と救急救命士はどっちがおすすめ?

仕事のやりがいは、ともに人の命を救う仕事となるため、患者さんやその家族から感謝されることが多いという点が挙げられます。

看護師は患者さんが元気な姿で退院したとき、救急救命士は急病の患者さんを無事病院へ搬送できたとき、それぞれの役割に応じた仕事への達成感を得ることができます。

仮に転職を考えた際は、先にも挙げた通り、看護師のほとんどは医療機関、救急救命士のほとんどは消防署に勤めるため、有利なのはやはり選択肢が広い看護師のほうでしょう。

看護師は病院の他にも、介護施設などでも就業することもできますので、さまざまなキャリアを選択することが可能だといえます。

救急救命士の場合、消防官採用試験に合格しなければならないというハードルもあります。

採用試験の倍率は高く、救急救命士として働くまでの道のりは簡単ではありません。