国税査察官の仕事内容・なるには

国税査察官の仕事内容

脱税被疑者を刑事犯として裁判所に告発

「国税査察官」は国税専門官の職種のひとつで、脱税を見つけ、裁判所に告発することをおもな役目としています。

映画『マルサの女』で一躍有名になった仕事で、国税専門官といえば、査察官の姿をイメージする人もいるようです。

脱税は個人事業者だけでなく、会社ぐるみで組織的に行われることもしばしばあり、そうした悪質な脱税の実情を探るため、国税査察官は裁判官の許可を得たうえで被疑者の家宅捜索などを行い、証拠を収集します。

そして、実際に脱税が行われていると客観的に判断された場合、脱税被疑者を刑事犯として裁判所に告発します。

徹底的な情報収集を行い、脱税を見抜く

国税査察官は、タフな精神力と体力が必要な仕事です。

毎年、国税査察官が検察庁に告発する脱税件数は年間で100件ほどであり(令和2年度は83件)、大きな活躍を見せています。

国税査察官は常に脱税の動向がないか情報網にアンテナを張り巡らせ、怪しいと思った際には徹底的に情報収集を行います。

脱税は、刑事告発するまではどんなに怪しくても容疑であるため、収集した情報は徹底して管理し、秘密厳守で動かなくてはなりません。

大規模な脱税をする被疑者の多くは大企業の役員政治家などで、こうした各方面に影響力を持つ実力者を脱税容疑者として追うことは容易なことではありません。

しかし、圧力に耐えて不正を暴いたときの達成感は、ものすごく大きなものとなるようです。

権限強化により存在感は増す

近年、財務省と国税庁は、脱税を調査する査察官の権限強化にむけて動いています。

脱税調査の手続きは「国税犯則取締法(国犯法)」という法律によって定められており、その改正案では、査察官が電子メールなど電子データを押収できるようにするほか、夜間の強制調査も可能にすることが盛り込まれています。

これにより、国税査察官の担う役目はますます重要なものとなっていくものと考えられます。

国税査察官になるには

国税査察官も国税専門官の一種ですから、まずは国税専門官採用試験に合格し、採用されることが第一歩となります。

国税専門官として採用されたのち、税務大学校にて約3ヵ月間の専門官基礎研修を受けて、自分が採用された局管内の各税務署に配属されます。

税務署では、管理運営部門と呼ばれる税金の収納や窓口業務などを行う部署に配属に配属され、1年間の実務経験を経た後に、外部事務に関連した実務的な事項を習得する「専攻税法研修」を受講します。

研修終了後はさらに実務経験を積み、高度な専門的知識や技能を習得するための専科研修を経て、勤務状態や本人の希望、適性などを総合的に判断され、国税査察官に任命されます。

国税査察官として働いた後に「国税調査官」や「国税徴収官」に異動となることもあります。