管理栄養士の高齢者施設でのやりがい(体験談)

栄養のトータルコーディネートができる

管理栄養士は、ケアのアイテムとして「食品」を用いますが、その食品も幅広いものを指します。

水や米、野菜、お菓子などはもちろんのこと、その形態が変化した流動食や栄養成分だけを調整したものなど、多くのアイテムがあります。

さらに小さな成分だけにした点滴なども栄養管理の対象に含まれます。

これらが、口から入っていく方法以外にも胃や腸、血管へ直接入る場合にもしっかりと把握します。

個人のその時の状況に合わせて食品の形態を変化させることや調理技術で対応すること、味付け、食品の種類そのものなど、その場で考え行っていきます。

これらの業務は、高齢者施設という規模の管理栄養士にしかできないといっても過言ではありません。

長期の関わりで得られる経験

施設管理栄養士の業務の1つである「栄養ケアマネジメント」を通して、一人ひとりの栄養・身体状況が著しく改善することがあります。

高齢者相手という特性上、状態が悪化するときには、まったく水分を摂ることができなくなることや意識が遠のいて意志疎通が困難になることも少なくありません。

しかし、考えられる対応すべてを使ってでも状態改善に努めるよう取り組みます。

口腔内の状態や飲み込みの状態に合わせて食事形態を変化させ、その状況を的確に判断していくことはとても重要で、これによってドロドロの流動食から固形が食べられるようになると同時に意志疎通もスムーズになることがあります。

当然栄養管理も行い、栄養・身体状況も改善していきます。

口から食べることで舌の筋肉を使うために舌が大きく発達してくる経過、腸を使うことで身体状況がみるみる改善する様子などさまざまな場面を経験することができます。

これは施設ならではの長期の関わりの中だからこそ経験できることです。

最期の時までできることがある

看取りを行っている施設では、最期の時まで関わることができます。

すでに固形物が食べられない状況になっている方に「すいか食べたいな」と言われたため、果汁だけのものや、ややトロミをつけたもの、繊維を感じる固さのものなど種類を揃えて少しずつ口へ運ぶこともありました。

最期が近づき過去を振り返るなかで、懐かしく思うあの時の味や場面を日々共有していたからこそ、「その時」に感じたい香りや味が私たちにわかることがあります。

それをすぐに実行できる立場にいるのは管理栄養士であると感じます。これは、残されたご家族の気持ちに寄り添うことにもなり、大きな役割であるとも思えます。