看護師で感動したこと (体験談)

どんな仕事をしている方でも、やりがいや感動を感じる瞬間というものがあると思います。

例えば、料理をつくる仕事をしている方は、お客さまの「美味しい」という声や笑顔にやりがいを感じたり、ホテルなどといった宿泊施設で働いている方は、お客さまの「また来ます。」という言葉に感動するものではないでしょうか。

常に人と向き合い、生命を守る仕事をしている看護師だからこそ得られる感動というものが存在します。

私たち看護師は、どんなときでも人と向き合う職業です。よりよい看護を提供し、患者さんの安全を守るため、その方とそのご家族を誰よりも理解しようと心がけています。

たとえ患者さんの意識がない状態であっても、ご家族や友人といった周囲の方々の中に入り、本人の情報を得なければなりません。人間を相手にし、さらにそこに命が関わってきます。それゆえ、普通の仕事とは比較できないほどの感動を経験することもあります。

看護師は24時間患者さんに寄り添い、医師よりも誰よりもその方の状態を把握しています。そのため、患者さんの人に見せたくない部分を見たり、家族間のいざこざの仲介をすることもあります。

看護師生活も7年目を迎えた今、振り返ってみると多くの感動を経験させていただいたという記憶はありますが、やはりすぐに思い浮かぶのは、新人時代に関わった患者さんです。その中でも特に印象深かったエピソードをご紹介したいと思います。

新人時代、最初に私が配属されたのは大学病院内にある高度救命救急センターでした。24時間体制で救急車を受け入れ、日中はドクターヘリも出動するため、常に重症患者が運び込まれてくる殺伐とした現場です。

新卒という何の知識もない状態のまま救命救急の世界に飛び込んだ私は、理解不能の医療用語が飛び交う中をただただ先輩の後ろをついて走り回り、仕事を覚える努力をする日々。

「何もできなくて、ただ私たちのお尻を追いかけてくるだけでお給料がもらえるなんて、ほんと楽でいいわね。」という嫌味を先輩看護師から毎日のように言われたものです。

心身ともに憔悴しきっていたある日、普段周囲を見る余裕がまったくなかった私は、ふと壁にかけられていた1枚の絵に目がとまりました。それは決して美しいといえるものではなく、明らかに素人が描いた絵でした。

大きな紙に青空を飛ぶヘリコプター。それは、まぎれもなく私の勤務している病院のドクターヘリです。その横に大きく、「いのちをありがとう」と書かれていました。

決して綺麗な字ではありませんが、大きく、そして力強く。詳しくは聞きませんでしたが、おそらくドクターヘリで搬送された患者さんが退院されてから感謝の気持ちを込めて描いて下さったものだと、一目見て確信しました。

作者の素性はまったくわかりませんが、一体どのような方がどのような思いを込めて描いて下さったのか…などど想像すると、何ともいえない感動に包まれたものです。いのちをありがとう。たった一行の何気ない言葉ですが、日々命を守る立場の私にとっては重みのある言葉です。

毎日重い気持ちで働いていた私の心が、まるで絵の中の青空のように晴れ晴れした気持ちになりました。7年目になった今でも、仕事で落ち込むことがあると、私はこの絵を観に行くようにしています。

そうすることで、自分の仕事がいかに人の命を預かるという大切な仕事であるかということと、新人時代の純粋な気持ちを思い出すことができるからです。

私たち看護師は、患者さんやそのご家族の力になりたい一心で日々働いていますが、逆に患者さんやそのご家族に励まされ、支えていただいているという感謝を忘れないようにしたいと思います。

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