義肢装具士に必要なこと

障碍者に対する深い理解

義肢装具士の資格は専門の教育機関でしっかりと学習すれば、ほとんどの場合、試験を突破し、取得することができます。

しかし、国家資格の中では比較的取得しやすいため、安易な気持ちで志す人が少なからずいるというのが現状です。

せっかく学費を負担して学校に通い、見事資格を取得し、無事に就職が決まってもすぐに離職してしまう人も少なくありません。

その理由の一つに、義肢や装具を必要とする障碍を持った人達と接することに抵抗を感じてしまうということが挙げられます。

事故や病気で体の一部を失った人たちの喪失感は、健常者には計り知れないほど大きいものです。中には精神面にも深いダメージを受けている人もいます。

義肢装具士はそういった人たちの決して楽ではない社会復帰への道のりを心身ともに、サポートする役割を担っています。

義肢装具士を志す人はまず何にも優先して、障碍のある人たちに対する正しい知識と理解を持つようにしましょう。

人体の構造に関する確かな知識

義肢装具士が手掛ける義肢や装具は基本的にオーダーメイドです。使用者の体型や症状、目的に適合した義肢・装具をつくるために、採寸・採型から携わります。

その後、組立、仕上げなどの工程を丁寧に進めていき、完成した義肢・装具を実際に使用者に装着してもらいます。

これで義肢装具士の仕事が終わりだと思ったら大間違い。ほとんどの場合、使用者は着用後に違和感を訴えます。これを受け、義肢装具士は義肢・装具に微調整を繰り返し加えるのです。

その際は医師や理学療法士との連携が必要不可欠です。

義肢装具士はものづくりの職人である上に医療人でもあるため、高度な技術と同時に、人間の体の構造やしくみに関する基本的な医療知識が求められます。

医療人としての強い使命感

義肢装具士は人工の手足、つまり義手や義指、義足、コルセットやサポーターなど低下した身体機能を補う医療器具を医師の処方のもと、設計・制作する専門職です。

これらの器具をつくること自体には実は資格は必要ありません。

しかし、医療機関で使用者の体に直接触れて型を採ったり、着用後に器具を調整して、適合させたり、場合によってはリハビリに参加したりする行為は、国家資格を有する義肢装具士だけに認められた医療行為です。

義肢装具士はもともと手先が器用な人が多く、ものづくりに長けた職人としての側面が強いことも事実ですが、使用者一人ひとりと深く関わり、信頼関係を構築できなければ初めてその技術力を発揮することはできません。

医療人として必要な知識はもちろんのこと、適切なコミュニケーション能力は必要不可欠であるといえます。

確かなものづくりの技術

義肢装具士にとって、使用者と実際に関わりながら寸法を測り、でき上がった器具を適合させるために、リハビリの現場に出向くことも大切な仕事であるのは前述の通りですが、実際に器具を作成する作業そのものは工場で行うことになります。

したがって、義肢装具士の主な就職先は義肢装具製作会社やメーカーです。

製作会社やメーカーは従業員10〜20人と小規模である場合がほとんどであるため、一つの器具を作成するには通常、すべての工程は一人の義肢装具士が担うことになります。

採寸に始まり、利用者が違和感のない快適な着用感を得るまでにはそれなりの期間を要します。

義肢の形を人体と合うように整える造形的なセンスだけでなく、細かい作業を一つひとつ丁寧に仕上げていく根気強さも大切です。

使用者の立場に立つこと

義肢装具士には職人としての根気強さや高い技術力、そして医療人としての豊富な知識を身につけていることが求められますが、それだけではこの仕事は務まりません。

義肢・装具をつくる上で最も大切なのは使用者のニーズです。それを親身になって聞き出すコミュニケーション能力や、相手の気持ちをくみ取る思いやりがなければ、義肢装具士として不十分です。

体の一部を失い、心身共に大きな傷を負った人の中には、義肢・装具の着用を拒絶する人もいます。リハビリに後ろ向きになったり、日常生活に復帰すること自体をあきらめたりする人も少なくありません。

心を閉ざしがちな人に寄り添い、粘り強く接することができることが、義肢装具士に最も必要な資質であるといってもよいでしょう。