不動産鑑定士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介

不動産鑑定士の仕事とは

不動産鑑定士は、その名称の通り、不動産の価値を鑑定する職業です。

不動産の鑑定評価は、不動産鑑定士にしかできない「独占業務」と呼ばれる種類の業務であり、手掛けるためには国家資格を取得することが必要です。

不動産鑑定士が行った評価は、国や地方自治体が発表する公的価格の指針になったり、銀行が融資を行う際の担保評価に用いられたりと、社会や経済に対する大きな影響力を有します。

また、不動産に関する豊富な専門知識やスキルを用いて、不動産オーナーや不動産の購入・売却を検討している人に対し、コンサルティングを行うことも不動産鑑定士の仕事です。

不動産鑑定士は、金額が大きいにも関わらず「定価」という概念がない不動産に対し、適正かつ客観的な評価を下すことで、社会全体が誤った方向に行きすぎることを防ぐ重要な役割を担っています。

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

不動産鑑定士の業務の内容

不動産鑑定評価業務

土地や建物といった不動産の実際の取引価格は、社会の景気動向や政府の金融政策、オリンピックなどの国民的イベントなどの外部要因に大きな影響を受けやすい特徴があります。

また、相続税の負担を軽減するために急いで手放さないといけなかったり、生活の事情で早急に物件を購入しなければならなかったりと、個別の事情によって値段が上下することも珍しくありません。

このように、不動産の価格は、不動産そのものとは直接関係のない理由によって大きく変わってしまうため、その値段が本当に適正なのか、一般の人には非常にわかりくいものです。

そうした際に、土地や建物の本来の価値を的確に評価し、適正な不動産取引をサポートするために行われるのが、不動産鑑定士の鑑定評価業務です。

評価に際しては、登記情報や固定資産評価といった公的情報や関係法令などを調査するとともに、現地調査や聞き込みなどのフィールドワークも行って、多角的に情報を収集します。

そうして得た情報を専用のツールを駆使して解析し、評価内容をわかりやすく説明する文章を添えて、最終的な「不動産鑑定評価書」に取りまとめるのが不動産鑑定士の仕事です。

コンサルティング業務

不動産の用途は多種多様にあり、たとえばビルひとつ取っても、物販店を誘致してテナントビルにする方法もあれば、企業を集めてオフィスビルにしたり、医療に特化したクリニックビルにする方法もあります。

立地や周辺環境、建物の構造、時代ごとの需要などを勘案して、不動産を所有するオーナーに対し最適な利用法をアドバイスすることも、不動産鑑定士の重要な業務です。

同じように、不動産に対する投資を検討している人に対して「デューデリジェンス」と呼ばれる投資判断材料となる資料を作成し、投資活動のサポートを行うこともあります。

不動産鑑定士の仕事の流れ

不動産鑑定士の仕事は、まず顧客から鑑定依頼を受け付けるところからスタートします。

物件の詳細や鑑定の目的などを伺うとともに、鑑定費用や必要期間の概算を提示し、顧客から正式に依頼を受けたら、まずは法務局や役所に赴き、対象物件の公的情報を確認します。

その次に、対象物件を訪れてに現地調査を行い、土地の形状や周辺環境、利便性、土壌汚染の有無、建物の使用状況、造作の程度などを子細に調べ、データを事務所に持ち帰ります。

ときには、過去の使用歴などを知るために、近隣住民などへの聞き込みを行うこともあります。

その後、対象物件の地価や路線価、関連している法律や条例、周辺相場情報などを参照しながら、既定の手順に則って価格の算定作業を行います。

算定が終了したら、説明文章などを適宜挟みつつ、「不動産鑑定評価書」を作成します。

出来上がった評価書を顧客に提出し、算定根拠などを詳細に説明して、応諾が得られれば一連の業務は完了となります。

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

不動産鑑定士の役割

不動産価格を適正な方向に導く

不動産は、一般的な商品や株式などの有価証券のように、世間に広く公開されたマーケットが存在せず、価格は買い手と売り手との相対取引のみで決まります。

このため、ときには適正とはいえない価格で取引されることもあり、かつて社会全体が不動産の価値を妄信した結果、不動産価格の異常高騰を招き、それに続くバブル崩壊を引き起こしました。

そのような経済の混乱を防ぐため、正しい鑑定評価を行って、不動産価格を適正な方向へ導くことが、不動産鑑定士に課せられた社会的役割といえるでしょう。

相続税や固定資産税に関するトラブルを予防する

両親や親族などから不動産を受け継ぐ際に発生する相続税や、不動産の所有者が毎年支払わなければならない固定資産税は、対象となる不動産自体の金額が大きい関係上、税金も高くなりがちです。

このため、納税者はそれらの税金の算出根拠について非常にシビアであり、明確かつ公平な根拠がなければ、法律に基づいて「不服申し立て」が行われることもあり、ときに泥沼化するケースもあります。

不動産鑑定士は、誰もが納得できる平等な手法を用いて、相続税や固定資産税の算出根拠となる「公示価格」を決定することも仕事のひとつです。

不動産鑑定士は、日々の業務を通して、納税に関するトラブルを未然に防いでいるといえます。

投資家の保護

不動産は、株式などと同じように、「REIT(不動産投資信託)」と呼ばれる有価証券となり、投資の対象となることもあります。

その際、証券化される不動産の価値を評価することも、不動産鑑定士の業務のひとつです。

投資家が正しい判断を下すためには、その対象である不動産が適正に評価されていなければならないため、不動産鑑定士は業務を通して投資家を保護する役割を担っています。

また、近年では、企業がもつ不動産の価値を時価評価して、その結果に基づいて所有資産の減損処理などを行い、決算に反映させる「IFRS」という国際会計ルールを適用する企業が増えています。

財務内容を実態に即したものに修正することは、企業の株式価格を適正化することに繋がるため、不動産投資信託と同様、上場企業株式においても投資家の保護に一役買っているといえます。

不動産鑑定士の勤務先・有名な企業

不動産鑑定士の勤務先は、大きく分けて「不動産業界」と「金融業界」の2種類があります。

前者に代表されるのは不動産鑑定事務所であり、国や都道府県からの公的評価を手掛けるところや、裁判所からの競売評価を請け負うところ、銀行からの担保評価を扱うところなどがあります。

大手どころとしては、日本不動産研究所、大和不動産鑑定、谷澤総合鑑定所の3社が有名です。

また、一般の不動産会社に勤務して、自社で取り扱う不動産の評価を専門に手掛ける人もおり、有名企業としてはCBREというグローバル企業が筆頭です。

後者に属する企業はかなり幅広くありますが、信託銀行などの金融機関、証券会社、監査法人などが挙げられます。

なお、不動産鑑定士が必要となるのは、メガバンクや外資系証券会社など名の知れた大企業ばかりです。

そのほか、富裕層向けのコンサルティング会社に勤務する場合もありますし、変わったものでは、鉄道会社の用地管理部署に勤める人もいます。

鉄道会社は、線路や駅、駅前商業施設など、自社で多数の不動産を保有しているため、その管理や時価評価のために不動産鑑定士を自社で雇用するケースも多いようです。

不動産鑑定事務所で働く不動産鑑定士

不動産鑑定事務所では、国や都道府県、市町村、裁判所といった公的機関から依頼を受けることもあれば、銀行をはじめとした法人企業や、資産運用を検討している個人から依頼を受けることもあります。

物件の規模やスケジュールにもよりますが、それぞれの物件調査から鑑定評価書の作成までに至る一連の業務は、個々の不動産鑑定士が単独でこなすことが一般的です。

近年では、とくに投資関係の案件が増加傾向にあり、その不動産が投資に向いているかどうかを判断する「デューデリジェンス」という作業を手掛けるケースが多くなっています。

同じように、経済の国際化が急速に進展している背景もあり、企業会計に「IFRS」という国際基準のルールを適用する企業が増えており、それに対応するため保有資産を時価評価する案件も増えています。

金融機関で働く不動産鑑定士

金融機関で働く不動産鑑定士の仕事内容は、さらに「担保評価部門」に所属するケースと「信託部門」に所属するケースの2つに大別されます。

銀行が法人や個人にお金を貸し付ける際、その保証として「不動産担保」を徴求することがよくあります。

担保評価部門の不動産鑑定士は、担保物件にいくらの市場価値があり、売却した場合にいくら回収できる見込みがあるのかを評価して、貸し付ける金額の妥当性を検証することが仕事です。

また、不動産のなかには、所有権を元のオーナーに残したまま、専属の管理会社が運営を行い、そこから得られる賃料収入などをオーナーに還元するという「信託形式」が取られるものもあります。

信託部門の不動産鑑定士は、物件ごとに最適な運用方法を見出し、得られる利回りを最大化することがおもな仕事です。

なお、どちらの部門についても、不動産鑑定士が求められるのはメガバンクをはじめとした大手金融機関に限定されます。

コンサルティング会社で働く不動産鑑定士

コンサルティング会社では、不動産鑑定士が単独で動くよりも、弁護士司法書士税理士など、法人企業や富裕層の個人と顧問契約を結んでいる他士業者と連携して働くケースが一般的です。

コンサルティングの内容は多岐にわたりますが、企業が保有する資産の最適な運用方法を提案するCRE戦略業務や、不動産オーナーのもつ資産の利回りを向上させるアドバイザリー業務などが代表的です。

コンサルティングは、鑑定評価のように定められたルールや手順に従う正確性・綿密性が求められるというよりも、個々の案件に応じて臨機応変に対応していく発想力・フットワークが求められる仕事です。

同じ不動産鑑定士であっても、不動産鑑定事務所に勤める人とコンサルティング会社に勤める人では、向き不向きは大きく違ってくるでしょう。

独立して働く不動産鑑定士

不動産鑑定士が独立して、自身の不動産鑑定事務所を開業するケースも少なくありません。

資格保有者にしかできない「独占業務」が認められているうえ、開業にあたって特殊な機材などが必要になることはほぼなく、初期投資が安くて済むため、不動産鑑定士は開業しやすい職業といえます。

基本的な業務内容は、不動産鑑定事務所に勤めている場合と大きな違いはなく、顧客から依頼された案件をこなしていくことになります。

ただし、都道府県や裁判所といった公的仕事は、ほぼ既存の事務所に受注先が固定されているため、新規開業者がそこに割り込んでいくことは至難です。

不動産鑑定士には、サラリーマンなどと違って定年退職がなく、本人の意思次第でいつまでも続けられるため、なかなか世代交代が進まない事情もあります。

独立開業するなら、詳細なマーケティング調査を行って、できる限り競合の少ないエリアを狙って創業するなど、なんらかの事業戦略が必要になるでしょう。

不動産鑑定士と関連した職業

宅建士(宅地建物取引士)

宅建士は、不動産の売主と買主、大家と借り手をつなぎ、物件の案内や契約書の作成、重要事項の説明などを行う仕事です。

不動産鑑定士と同じく不動産に関する専門職ですが、不動産鑑定士が物件の評価を行うのに対し、宅建士は物件の仲介を行うという違いがあります。

宅地建物取引主任者の仕事

土地家屋調査士

土地家屋調査士も、不動産鑑定士と同じ不動産の専門職であり、土地を測量したり、土地と土地の境界を確定させて地主同士の紛争を解決する仕事です。

建物を新築した際などに、建物の構造や用途、床面積などを調査し、法務局に登録する「表題登記」は、土地家屋調査士だけが行うことのできる独占業務です。

土地家屋調査士の仕事

公認会計士

公認会計士は、上場クラスの大企業に対する監査を行い、法律に則って適正に会計処理がなされているか監視する職業です。

近年は企業会計に関する法改正が実施されたこともあって、企業が保有する不動産を時価評価するケースが多くなっており、不動産鑑定士との関連性が強くなっています。

公認会計士の仕事