不動産鑑定士の年収はいくら? 給料についてくわしく解説

不動産鑑定士の平均年収・給料の統計データ

不動産鑑定士になるには、何千時間もの膨大な勉強をこなして試験を突破する必要があります。

しかし、給料面については、一般的な会社員の平均年収を上回る水準ではあるものの、「弁護士」や「公認会計士」ほど飛びぬけて高給というわけではありません。

その代わり、不動産鑑定士は数が限られていること、また鑑定評価業務という資格保有者にしかできない「独占業務」があるため、不況時でも給料面が安定しやすい点がメリットです。

不動産鑑定士の平均年収・月収・ボーナス

賃金構造基本統計調査

不動産鑑定士の平均年収_2019

厚生労働省の令和元年度賃金構造基本統計調査によると、不動産鑑定士の平均年収は、46.6歳で755万円ほどとなっています。

また、月額給与は約49万円、年間のボーナスは約166万円です。

・平均年齢:46.6歳
・勤続年数:7.5年
・労働時間:146時間/月
・超過労働:0時間/月
・月額給与:490,300円
・年間賞与:1,662,300円
・平均年収:7,545,900円

また、男女別にみると、月額給与では女性が男性を7万円ほど上回っており、ボーナスではその逆に男性のほうが女性より49万円も高くなっています。

しかし、これは不動産鑑定士の人数自体がさほど多くないうえ、なかでも女性の不動産鑑定士は全体の7%程度しかいないために、データ数が少ないことが大きく影響しています。

統計上は女性のほうが平均年収が高くなってはいますが、男性のほうが女性より不利であるわけではありません。

出典:厚生労働省「令和元年度 賃金構造基本統計調査」

※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

求人サービス各社の統計データ

職業・出典 平均年収 年収詳細
不動産鑑定士
転職ステーション)
674万円 -
不動産鑑定士
indeed)
619万円 時給 1,532円
月給 29.2万円
不動産鑑定士
求人ボックス.com)
551万円 359万円〜1,018万円
不動産鑑定士
リクナビNEXT)
679.1万円 20代471.3万円
30代599万円
40代784.5万円
50代754.2万円
60代785万円

各社の統計データをまとめると、不動産鑑定士の年収は、厚生労働省の調査結果よりもう少し上、650万円台から700万円台に集中していることがわかります。

indeedや求人ボックスのデータがやや低くなっているのは、「補助者」として不動産鑑定士事務所などで働く無資格の求人情報が一部に反映されているためと推察されます。

不動産鑑定士は、試験に受かるまでの無資格の間は、経済的に厳しくなる可能性もありますが、そのぶん、資格を取得してからの給料は保証されています。

不動産鑑定士の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

賃金構造基本統計調査から、不動産鑑定士の平均的なボーナスは月収の約5ヵ月分と推定できます。

平均年収を670万円とした場合、月収は約39万円、ボーナスは約197万円です。

そこから所得税や住民税、社会保険料などを差し引くと、月々の手取りは、独身の場合で29万円~31万円、ボーナスの手取りは151万円前後の計算になります。

これだけの手取り収入があれば、とくに独身者については日々の暮らしにはゆとりがあり、夏と冬の賞与時期はリッチに過ごすこともできるでしょう。

よっぽどの浪費家でない限り、不動産鑑定士が経済的に困る心配はまずなさそうです。

不動産鑑定士の初任給はどれくらい?

不動産鑑定士になるためには、難関試験を突破した後に、勤務先において働きながら「実務修習」を受講することが義務付けられています。

これはちょうど弁護士における司法修習と同じような制度であり、試験には合格していても資格は使えないという、あくまで「見習い」の状態です。

このため、不動産鑑定士の初任給は一般的な大卒者とほぼ同じ水準であり、20万円~22万円前後が相場とされています。

がんばって試験に合格したにも関わらず、普通の人と同じ初任給であることに不満を覚える人もいるかもしれません。

しかし、実務修習期間後は資格手当なども加算されて、一気に5万円前後昇給するケースが一般的ですから、キャリア2年目~3年目からは、それまでの苦労に見合った給与が期待できるでしょう。

令和元年 不動産鑑定士の年収(年齢別・男女別)

統計の母数が少ないため、あくまでも参考程度の数字となります。

平均年収は755万円となっています。

不動産鑑定士の年収(年齢別)_r1

令和元年 不動産鑑定士の年収(規模別)

10人〜99人の事業所に勤める不動産鑑定士の年収は755万円、10人以上規模平均は755万円となっています。

調査人数が少ないため他の事業規模の年収は不明ですが、総じて年収は高めといえそうです。

不動産鑑定士の年収(規模別)_r1

賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

不動産鑑定士の福利厚生の特徴は?

不動産鑑定士の福利厚生は、年収とは対照的に、勤め先の規模によって大きく事情が分かれます。

大手の不動産鑑定会社や信託銀行などの金融機関では、有給休暇などの各種制度が充実しており、大企業では自社所有の保養施設などが利用できるケースもあります。

その一方、小規模の不動産鑑定事務所では決して福利厚生は手厚いとはいえず、人繰りの問題などで、各種制度も「あるけど使えない」ケースも珍しくありません。

このため、とくに出産や育児などのライフイベントの多い女性については、福利厚生の整っている大きな組織に就職したほうが、キャリアプランを描きやすいかもしれません。

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不動産鑑定士の給料・年収の特徴

実務修習期間中は低収入

不動産鑑定士の初任給が低いのは上述した通りですが、その低収入の状態は実務修習期間を終えるまで、一般的には2年ほど続きます。

不動産鑑定士試験の難易度を考えると、新卒の時点で合格することは非常に困難であり、受かるのに数年を費やすケースも十分に考えられます。

すると、20代後半や30代における月収が20万円前後、手取りにして10数万円になり、同世代の収入を下回ることがほとんどです。

そのうえ、実務修習は受講料やテキスト代などで総額100万円ほどの費用が発生するため、ある程度の貯蓄がないと、日々の生活はカツカツになる可能性がかなり高いといえます。

不動産鑑定士を目指すなら、この実務修習期間中における経済的なつらさを、あらかじめ覚悟しておくべきです。

ただし、事務所によっては、実務修習にかかる費用を勤務先が代わりに負担してくれるケースもあるようです。

固定資産税評価替えの年は収入が増える

すべての土地や建物には、個別に「固定資産税評価額」が定められており、その価格に基づいて、不動産の所有者に固定資産税が課税されます。

この評価額は、最新の社会情勢などの実態を反映させるために、3年ごとに「評価替え」が実施されるため、不動産鑑定士の需要も3年に1回、大きく増えることになります。

このため、評価替えの年は公的な依頼が殺到し、不動産鑑定士は非常に忙しくなりますが、そのぶん、ほかの年度よりも高収入が期待できます。

実際の上がり幅は個人次第であり、どれだけ自治体からの案件を獲得できるかによりますが、評価替えのある年は不動産鑑定士全体の平均年収が100万円近くアップすることもあるようです。

調査報酬は事務所次第

不動産鑑定士が鑑定評価業務によって受け取る報酬は、かつては報酬額表に基づいてどこの事務所でも一律でしたが、現在ではそれぞれが自由に設定できるようになっています。

このため、不動産鑑定事務所のなかでかなり大きな収益差が生じており、経営センスや営業力などに優れ、単価の高い案件を数多くこなしているところほど高収益で、スタッフも高給です。

就職する際には、ただ提示された昇給プランを鵜呑みにするのではなく、各事務所がどんな強みをもち、どのような戦略を取っているのかということまで調べてみることが大切です。

事業の安定性・継続性を考えて、給料アップが期待できそうな先を探しましょう。

就職先別に見る給料・年収

不動産鑑定事務所で働く不動産鑑定士の給料

不動産鑑定事務所に勤める不動産鑑定士の年収は、400万円~700万円くらいが相場です。

不動産鑑定士全体の平均からみるとやや低水準ですが、不動産鑑定事務所は日々の業務量が安定しており、残業代がほぼ発生しない点が、あまり収入が高くない要因として挙げられます。

そこまで突出した給料を得られるわけではありませんが、ワークライフバランスは取りやすく、家庭生活を充実させやすいでしょう。

金融業界で働く不動産鑑定士の給料

メガバンクや地方銀行、信託銀行、証券会社、保険会社といった金融業界で働く不動産鑑定士の給料は、年収400万円~1000万円とかなり開きがありますが、全体的に高水準です。

評価業務などのデスクワークに加えて、顧客への資産運用の提案やアドバイスなどの業務も発生するケースが一般的であり、不動産鑑定事務所と比べると仕事内容はかなりハードといえます。

しかし、そのぶん高収入が期待でき、とくに投資やアセットマネジメント、M&Aなどの専門知識をもつ不動産鑑定士については、年収1000万円以上稼いでいる人も珍しくありません。

コンサルティング会社で働く不動産鑑定士の給料

コンサルティング会社で働く不動産鑑定士の給料は、500万円~1200万円ほどが相場であり、金融業界にも増して、かなり個人差が大きくなりやすい点が特徴的です。

年齢はほぼ関係なく能力主義の傾向が強まるため、若くして年収1000万円に到達することも可能である一方、結果が伴わなければ数年程度で解雇されるケースもあります。

コンサルティング会社は、ハイリスク・ハイリターンで、安定とは対極にあるといえるでしょう。

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不動産鑑定士が収入を上げるためには?

不動産鑑定士が収入を上げる方法としては、キャリアを積んで外資系企業に転職する道がまず考えられます。

外資系で活躍するためには、不動産の価値や企業の価値を評価する「デュー デリジェンス」に関するスキルや、「国際会計基準(IFRS)」に関する知識などが必要であり、難易度は非常に高めです。

しかし、外資系で活躍できれば、年収1000万円以上、あるいはその2倍も3倍も稼ぐことも夢ではありません。

また、それ以外の方法として、組織から独立し、自身の不動産鑑定事務所を開業するという道もあります。

ただ、現状のマーケットは既存の事業者だけでほぼ埋まっており、新参者が古参の不動産鑑定士から案件を奪い取ることは、きわめて困難といわざるを得ません。

独立を成功させるには、事前にマーケティングを行って比較的競合の緩いエリアを狙うか、まったく新しい鑑定需要を掘り起こすなど、なんらかのビジネスアイデアが必要になるでしょう。