治験コーディネーターの需要・現状と将来性

治験コーディネーターの現状

新薬の開発に大きな存在感を示す

新薬が開発され、実際の薬として使われるためには、有効性や安全性、使用方法を確認するための多くの臨床試験、すなわち治験が必要とされます。

治験コーディネーター(CRC)は医師をはじめとする医療スタッフや患者さんである治験参加者、製薬企業などの治験依頼者(依頼元)の間に立ち、治験がスムーズに進行するようさまざまな業務を行います。

日本における治験の状況としては、日本は新薬の開発も盛んで、年間150件程度の治験が計画されています。

この傾向は今後も続くと予想され、治験において重要な役割を担う治験コーディネーターは今後もますますニーズが高まっていくとされています。

国による治験の促進計画も

厚生労働省は文部科学省とともに2003年に「全国治験活性化3ヵ年計画」、2007年に「新たな治験活性化5ヵ年計画」、2012年に「臨床研究・治験活性化5ヵ年計画 2012」というものを策定しました。

これは、課題とされている疾患に有効な画期的な新薬開発を促し、患者さんに対して迅速に提供することを目的としています。

「臨床研究・治験活性化5ヵ年計画 2012」では、「9年間の活性化計画を踏まえたさらなる飛躍と自立」と「日本発の革新的な医薬品、医療機器等創出に向けた取り組み」を目指しました。

具体的には、たとえば治験手続きの効率化や人材確保、コストの適正化、実施体制の整備、開発が進みにくい分野への取り組みの強化などです。

この計画では治験コーディネーターの重要性についてもふれられており、海外諸国に準じた人材確保に加え、人材育成も重要な目標のひとつとなっています。

国によるこうした取り組みからも、今後、治験コーディネーターの需要や重要性は増大していくと予想されます。

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治験コーディネーターの需要

昨今の日本では、医療費の増加を抑えるため、厚生労働省の指針によって医師や薬剤師の主導で「ジェネリック医薬品」の使用が推進されています。

その結果として、製薬企業はますます新薬の開発に力を入れていますが、最も大きな疾患領域である「がん領域」の開発が一段落したあと、それほど多くの治験の需要が見込める領域がない可能性が懸念されます。

また、AI化によって遠隔モニタリングなどの治験を効率的に進める技術が進んでおり、全体として治験を行うために必要なサンプル(被験者)の数は確実に減っていくことが予想されています。

そのため、新たな医薬品の開発には多くのパイプラインが主流となり、少ない症例数のプロトコルがメインとなってくる傾向にあると考えてよいでしょう。

つまり、治験全体の需要が減るということは、必要な症例数が減少するため、治験の需要そのものが減少していくことになります。

治験においては「がん領域」が現在ピークを迎えており、今後、数としてはなだらかに減少すると予測されています。

そのため、治験業界ではその後を見据えた動きが始まっており、その中でつぎに最も有望であると言われているのが「再生医療領域」です。

次いで「遺伝子領域」や「医療機器領域」が続きますが、いずれも研究のスピードが速い分野であることと、今までと異なる専門的な領域の知識や経験が必要になってくるため、治験コーディネーターにはさらなる専門知識が求められると考えられます。

そして縮小される治験領域から、新たなる領域にチャレンジすることが必要になってくるでしょう。

治験コーディネーターはこの先、再生医療を主とする先端医療に関わる治験コーディネーターと、従来のがんや生活習慣病などの医療分野に関わる治験コーディネーターに二極化していくことが予想されます。

そして、後者の分野の医療に関わる治験コーディネーターの需要は治験の数とともに減少していくため、知識や力のある勉強している治験コーディネーターが生き残っていくと考えて間違いありません。

治験コーディネーターの将来性

雇用は拡大傾向に

政府の指針からも、治験コーディネーターは今後、重要性がますます高まっていくと見込まれています。

それでは、その将来性と展望はどのようなものと考えられているでしょうか。

治験コーディネーターは所属先によって多少状況が異なりますが、そのうちのひとつが病院に直接雇用される院内治験コーディネーターです。

医療機関では新たな人材の正式雇用にはあまり積極的ではないため、すでに勤務している看護師臨床検査技師、薬剤師などを治験の部署に異動させて治験コーディネーターとする場合が多いようです。

また、治験コーディネーターには、治験施設支援機関(SMO)に所属して病院などの医療機関に派遣されるパターンもあり、治験のアウトソーシングといってよいこの新しい業態は成長過程にあります。

現在においてはまだ大きな市場ではありませんが、アウトソーシング業界自体が拡大傾向にあり、また国の後押しもあることから、SMOに所属する治験コーディネーターも増加していくと予測されます。

治験コーディネーターの数の推移

日本SMO協会の調査によると、2008年に2,518名だった治験コーディネーターは年々増え続け、2013年には3,156名まで増加しました。

しかし、同年をピークに減少傾向にあり、2018年には2,893名となっています。

しかしながら、治験コーディネーター従事者数と治験症例数が減少傾向にあるからといって、それが即将来性に直結するとは言い切れません。

糖尿病や高血圧などの生活習慣病に対する治験件数は減少傾向にありますが、その一方で、がん治療薬の治験届件数は現在まだ増加傾向にあります。

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治験コーディネーターの活躍の場

代表的な就職先は?

治験コーディネーターとして勤務するためには、医療機関に直接雇用されて院内治験コーディネーターとなるか、治験施設支援機関(SMO)に所属して医療機関に派遣されるパターンか、このいずれかが一般的です。

どちらの治験コーディネーターも実際に携わる仕事の内容に大きな違いはありませんが、それぞれの待遇や年収、また実際の仕事のスタイルなどに違いがあります。

治験コーディネーターにもっとも多いのは、SMOに所属して、治験が行われる施設に派遣される働き方です。

このSMOとは、治験を実施する医療機関から委託を受け、医療機関の治験業務を支援する民間企業のことで、SMOは医療機関と契約を結び、治験コーディネーターを病院などの各医療機関派遣します。

治験コーディネーターは、そこで適正な治験がスムーズに実施できるよう、治験に関わる医師をはじめとする医療スタッフの業務を支援たり、被験者である患者さんのフォローをしたりします。

SMOの治験コーディネーターは、ひとつの治験が行われているあいだ、3ヵ月から1年程度、同じ施設を担当します。

病院以外にも活躍の場がある

また、治験コーディネーターには病院以外にも活躍の場があります。

病院以外の勤務先のひとつは、製薬企業です。

製薬企業では新薬が開発されますが、こうした医薬品は市場へ流通し、医師が処方をする前に、有効性や安全性を確かめるための多くの臨床試験(治験)が必要です。

そのため、製薬企業も新薬についてさまざまな角度から十分に調査する必要があり、その際に製薬企業で働く治験コーディネーターが活躍します。