ビジネス用語単純接触効果とは(読了時間:4分58秒)

テレビCMで使われている音楽をつい口ずさんでいた…という経験はないでしょうか。 これは多くの人にとって、身に覚えのある経験かもしれません。 実はそこには「単純接触効果」と呼ばれる心理作用が働いています。 私たちの行動にいつの間にか影響を与えている「単純接触効果」とは、どのようなものなのでしょうか。

単純接触効果とは

単純接触効果とは、視覚や聴覚など五感を通して特定の刺激に接触し続けることによって、次第にその刺激に好意を持つようになることです。

会う頻度が高くなることや一緒に過ごす時間が長くなることで、相手をよく思う感情が形成されます。

好意を持つ対象は人だけではありません。

モノに愛着が湧くのも、接触回数や頻度が増えるためです。

最初は何にも感じていない場合でも、何度も接触し続けることで「慣れ」が生まれ、好意へと変化していくとされています。

心理学者ザイアンスの論文がきっかけ

単純接触効果は、アメリカの社会心理学者ロバート・B・ザイアンスが「単純接触の態度への影響(Attitudinal Effects of Mere Exposure)」という論文の中で発表しました。

博士の名前をとって「ザイアンスの法則」とも呼ばれています。

心理学では限定的な環境下であれば、効果が認められる理論が数多くあります。

その中で単純接触効果の「特別な条件付けを伴わず、単純な接触によって好意の度合いが高まる」という現象は、社会心理学の枠を超えて多くの研究者から高い注目を集めました。

認知心理学や潜在意識などの分野にも研究領域は広がり、現代においても単純接触効果に関するさまざまな論文が発表されています。

単純接触効果が生じる理由

単純接触効果が起きる要因にはいくつかの説があり、中でも多くの支持を集めているのが「知覚的流暢性の誤帰属説」といわれています。

名称は少し難しいですが、要約すると「脳が同じ刺激を処理し続けると、処理の効率が上がるため好感を持つ。ところが脳は、好感を持った理由が刺激自体にあるのだと思い込んでしまう」という説です。

またこの説には「刺激を意識していない状態では好意が高まるものの、反対の場合には好意は抑制される」という特性も論じられています。

長年の研究の中で、この理論を検証するためのさまざまな実験が行われていますが、一方では「知覚的流暢性の誤帰属説」の矛盾を主張する論文もみられます。

要因の議論は今後も続きそうですが、単純接触効果はそれだけ多くの研究者を惹きつけ、まだまだ発展の余地がある理論ということでしょう。

単純接触効果の身近な例

日常生活の中には刺激へ接触する機会が数多くあります。

「刺激への接触」というと難しく聞こえますが、見たり、聞いたりする機会のことをイメージすればよいでしょう。

単純接触効果は、身近なところで私たちに大きな影響を与えています。

実際に体験している人も多いのではないでしょうか。具体例を確認しながら、自身の体験と照らし合わせてみてください。

単純接触効果の例:広告

<テレビコマーシャル>
CMが一定期間何度も放送されるのは、企業による単純接触効果を狙った広告戦略のひとつです。

繰り返し広告を見ていると、親近感や信頼感を抱きやすくなります。

CMで使われている音楽を自然と口ずさんでいたり、最初は何とも思っていなかったキャラクターをかわいく感じるようになったり、自分でも気付かないうちに企業に対してよい印象を抱くようになっていることがあります。

CMを見るたびに少しずつ好意が増していくことは、単純接触効果として説明できる現象です。

インターネットが普及する以前はテレビ広告を行っているだけで「テレビCMをしているからよい会社だ」と思われやすい傾向にありましたが、それも単純接触効果の影響といえるでしょう。

<インターネット広告>
テレビだけではなくインターネットでも同様です。

検索サイトを利用すると、検索結果にテキストや画像などを使った広告が表示されます。

過去に訪問したWebサイトの広告がどのページでも表示されたり、会員登録するとメールマガジンが届いたりします。

ここでも単純接触効果を引き出すために、企業によって商品やサービスとの接点を増やす工夫が取り入れられているのです。

特に近年のインターネット広告は技術が発達しており、テレビCM以上に、一度目にした商品を繰り返しユーザーに見せる仕組みになっています。

単純接触効果の例:SNSやLINE

単純接触効果は、広告よりさらに身近なところにもみることができます。

多くの人が毎日のように利用しているSNSやLINEなどのメッセージツールも、使えば使うほど好意の度合いが増していくといわれています。

たとえば、SNSでは実際に会ったことのない人とも友達になることがあります。

最初は特別な感情を抱いていない場合でも、毎日写真を見ることや「いいね」などのリアクション、コメントのやりとりを相互に行うことで徐々に親近感が芽生えてくるのです。

またやりとりをする相手だけでなく、コミュニケーションで利用するツール自体にも同様の感情が生まれます。

毎日利用していくうちにツールへの好感度が高まっていくのです。

さらにメッセージツールの使い方にも、単純接触効果は隠れています。

理論通りであれば、長い文章を一度に送り合って少ない回数で終わらせるよりも、短い文章を数回に分けて会話の回数を増やすほうが、相手をよく思う気持ちが強くなるということです。

職場や恋愛でも活かせる単純接触効果

単純接触効果を理解すれば、日ごろの生活に活かすこともできます。

ここでは職場や恋愛での応用方法についてみていきましょう。

営業の仕事での応用方法

新規営業の際、初回の電話で相手の警戒を解くことは簡単ではありません。

すでに契約の意志を表明している場合以外では、商談時も同様です。

そこで顧客との距離を縮めるために、単純接触効果を応用します。

初回の電話と商談という2回だけではなく、工夫をして接触回数を増やすのです。

単純接触効果の理論では長い商談を1回だけ行うよりも、短い商談で回数を重ねるほうが優位ですが、訪問回数を増やすと顧客の負担が増える可能性があります。

その場合には訪問前後に電話やメールを利用するなど、他の手段で接触回数を増やしてみるのもよいでしょう。

恋愛での応用方法

単純接触効果は恋愛でも応用できることがよく知られています。

気になる人がいる場合は、接触の機会を増やしてみましょう。

無理をして印象を残すような会話をしようとするよりも、会うたびに挨拶をすることが大切。

トークに自信がなくてもすぐに試せる方法です。

企業で社内恋愛が生まれることも、会う頻度の高さや接触時間の長さから考えると自然なことなのかもしれません。

単純接触効果の注意点

単純接触効果で好意の度合いが増えるのは、最初の接触時点で相手への評価がマイナスではないということが前提です。

すでに「嫌い」という感情がある場合、接触回数を増やすことはむしろ逆効果。

好感を持つどころか、印象が悪くなっていく可能性があるため注意しましょう。

単純接触効果は、私たちが知らないうちに影響を受けている身近な心理作用です。 上手に応用すれば仕事や日常生活で活かすことができますが、効果が期待できない状況で活用するとマイナスになるため注意が必要です。 日ごろ何気なく目にしている広告なども、単純接触効果を意識して違った角度から観察してみると、新しい発見があるかもしれません。