リスクマネジメントとは(読了時間:4分54秒)

企業などが万一のリスクに対して事前に備えることや、被害が生じた際の対策をあらかじめ用意しておくことを「リスクマネジメント」といいます。

ビジネス環境の変化に伴い、特に近年ではリスクマネジメントが企業経営においてもっとも重要な要素のひとつとなっています。

リスクマネジメントの詳しい意味や具体的な手法について紹介します。

リスクマネジメントの意味

リスクマネジメントとは、リスク(危険や被害)を未然に防ぐためにコントロールすることです。

あらゆる分野に存在する、さまざまなリスクを軽減するための活動全般を意味しています。

リスクマネジメントでは大きく2つをコントロールするといわれており、1つは損失が生じないよう、回避可能なリスクを取り除いておくこと。

もう1つは、万一損失が発生した場合でも被害を最小限に押さえられるよう、事前に対策を講じておくことです。

さまざまな分野におけるリスクマネジメント

業界が異なれば、リスクの中身も変わります。

各分野におけるリスクについて確認していきましょう。

経営におけるリスクマネジメント

企業を経営するうえでのリスクマネジメントは非常に多岐に亘ります。

製造物責任や機密情報・個人情報漏洩、在庫過多など経営上のリスクから、近年の日本では特に注目度の高い災害・環境リスク、為替変動や戦争などによるカントリーリスクまでさまざまなリスクが挙げられます。

食品業界におけるリスクマネジメント

食品業界においては大きく3つのリスクマネジメントが考えられています。

(1)安全性

食品中に含まれる病原細菌による危害や化学物質の作用による危害、異物混入など物理的な危害を防ぐためのリスクマネジメントが求められています。

安全性リスクを防止するための代表的な管理システムにはHACCP(ハサップ)が挙げられ、日本語では「危害要因分析重要管理点」と訳されます。

HACCPでは、食品の原材料が工場に入る段階から食品が出荷されるまで、すべての過程において安全性の管理が行われています。

(2)品質

食品の規格には「内容」「パッケージ」「表示」などがあり、その規格から逸脱することを防ぐためのリスクマネジメントです。

主に製造現場で取り入れられています。

(3)全般

食品安全マネジメントシステムとして「ISO22000」があります。

ISO22000は安全な食品を製造・流通・販売するための国際標準規格です。

医療・介護分野におけるリスクマネジメント

医療・介護分野では、主に事故防止活動のことをリスクマネジメントと位置付け、リスクが発生することによって起こる損失を最小限に抑えるために取り組んでいます。

転落や転倒など、介助や介護中に起こる可能性のある事故事例を「ヒヤリハット」と呼び、事故を回避するために積極的な啓蒙活動も行われています。

プロジェクト管理におけるリスクマネジメント

業界を問わず、プロジェクトとして進める業務にはリスクマネジメントが必要です。

分野によってプロジェクトの規模も異なるため一概にはいえませんが、プロジェクトにおいてリスクとなり得る内容をあらかじめ特定しておくことや、リスク発生時にもたらす影響を分析すること、リスクに対応する施策を持ち合わせておくことが求められています。

リスクマネジメントの手法

一般財団法人リスクマネジメント協会では、リスクマネジメントの手法として「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つを挙げています。

まずはリスクを生じさせる6つの要因を確認してから、リスクマネジメントの手法について理解を深めましょう。

6つのリスク発生要因

(1)環境:事業環境のこと

(2)ハザード:環境に影響を与えるもの。損失が発生する可能性を高める状況のこと

(3)エクスポージャー:損失が発生する対象のこと。物理的なものに限らず、金融資産や権利などさまざまなものが対象に含まれる

(4)機会:損失を生じさせる原因のこと

(5)直接的な損失:損失の中でも、状況が早期に顕在化するもの。企業が「損失」と認識している対象を指す

(6)間接的な損失:直接的な損失が原因となって生まれる損失のうち、将来的に事業に影響を与えるもの。

すぐには認識できず、顕在化するまでに時間がかかるもの。例えば、信頼喪失による取引停止のリスクは、データ消失などの直接的な損失が引き起こす、将来的なリスクであることが多い

リスクコントロール

リスクコントロールとは損失の発生を未然に防止すること、また万一発生した場合に損失の拡大を防ぐことです。

リスクは多様な条件の掛け合わせで発生し、そのメカニズムをリスクチェーンといいます。

リスクマネジメントでは、リスクの連鎖を断ち切ることで損失を防ぎます。

特に前述の6要因のうち、「ハザード」を取り除くことはリスクコントロールにおいてもっとも重要であり、高い効果を発揮する対処法です。

ハザードは損失を拡大させる要因ですが、意識できれば発見も難しくありません。

要因を特定して早期に改善できれば、未然に防ぐことができるのです。

また改善に費用がかかる場合は、起きるか分からない出来事への投資となるため消極的に捉えられがちですが、改善せずに損失が発生してしまうとさらに多くの費用がかかることになるでしょう。

リスクファイナンシング

リスクファイナンシングとは、損失が生じた場合に備える財務面での手段です。

どんなにリスクコントロールを行ってもリスクを100%防止・回避することはできないため、どのような組織においてもリスクは必ず保有することになります。

リスクそのものを変化させることはできませんが、事前にコントロールすることによって、万一損失が発生しても存続の危機に陥らないよう対処することが可能です。

損失分をすべて自社の資金によって賄う(リスクを保有する)場合に必要な資金を準備しておくことや、保険などに加入することでリスクを移転する方法もあります。

リスクを保有しておくことは「リスクテイク」、移転することは「リスクトランスファー」といいます。

求められるリスクマネジメント研修

近年、企業が抱えるリスクは多様化、複雑化し、リスクマネジメントは企業における重要課題のひとつとなっています。

管理者がリスクマネジメントを十分に理解できるよう、対象者に研修やセミナー受講の機会を提供する企業も少なくありません。

リスクマネジメントの研修内容

リスクマネジメントの研修では、基本的な知識や実際の対応について学びます。

研修内容例

<目的>
・リスクマネジメントにおける実践的な対応力の育成

<プログラム内容>
・リスクを予防する体制作り(考えられるリスクと原因について考える)
・リスク予測(多様な視点からリスクを洗い出す)
・リスク評価(リスク対策の優先順位をつける)
・リスク顕在化対策(リスクを予防するための方法と対応策を考える)
・組織におけるリスク管理(リスク対策の障害を洗い出し、実行する方法を考える)

不確実な時代といわれる現代において、企業があらゆるリスクと戦っていくためには、リスクマネジメントが不可欠です。リスクをゼロにすることはできませんが、どのような対策を行うかによって未来は大きく変化するでしょう。また地震をはじめとした自然災害は、個人にとっても身近なリスクです。個人でできることは限られているかもしれませんが、「備えあれば、憂いなし」の状態を意識することが、はじめの一歩となるのではないでしょうか。