エンパワーメントとは

エンパワーメントは、ビジネスから、社会問題、教育、医療まで、幅広い分野で使われる言葉です。

仕事におけるエンパワーメントは、緊張感を生む一方で、やる気をかき立てるといわれます。

さて、エンパワーメントとは、どういう意味なのでしょうか。





エンパワーメントとは

エンパワーメントとは、広義には、「相手の潜在能力を湧き出させ、自ら課題を解決できるように導くこと。

もしくは、自ら解決できる力を身につけること」を指します。

能力を湧き出させるという点を踏まえ、エンパワーメントを「湧活(ゆうかつ)」と訳すこともあります。

一方、ビジネスの場では、エンパワーメントは、「権限委譲」と訳されることが多くなっています。

この場合、「やる気と能力を引き出すようにサポートしながら、社員に仕事を任せること」を意味します。

エンパワーメントの語源と意味合いの変遷

エンパワーメントは、英語の「empowerment」から来た言葉です。

そもそもempowermentは、17世紀に、「公的権威や法的権限を付与する」意味で使われ始めたと言われています。

その後、1950年代~70年代のアメリカで、公民権運動や女性運動が高まる中、「社会的に抑圧されてきた人々が、本来の権利と自力で生きる力を取り戻す」意味合いを持ちます。

この頃から、「力を身につけること」という意味で用いられるようになったのです。

80年代頃からは、社会福祉や公衆衛生の分野で、「当事者自身が課題に気づき、判断、行動するよう導く」ニュアンスを含んで使われ始め、1990年代からは「権限委譲」の意味合いでビジネス分野でも多用されるようになりました。

エンパワーメントの意味するところは、社会の変化に合わせ、単なる権限の付与から、「当事者の自律性を重視しながら能力開花に導くこと」「能力開発につながる権限付与」へと変わっていったわけです。

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ビジネスにおけるエンパワーメント

さて、ここからは、ビジネス分野におけるエンパワーメントに絞って、話を進めていきます。

ビジネス用語として定着した背景

エンパワーメントという言葉が、ビジネスの場に登場してきた90年代は、エンパワーメント(権限委譲)を取り入れる企業が現れてきた時代でもあります。

当時、企業が世界規模で事業拡大を行う「グローバル化」が進みました。

このグローバル化が、エンパワーメント導入を後押ししたのです。

本国の経営幹部に全ての判断を仰いでいたのでは、迅速かつ的確にグローバル化を進展できません。

スピーディーな事業展開のために、海外の現場社員の業務遂行を支援しながら、権限を与え、現場で状況を把握し、判断させるようになりました。

つまりエンパワーメントを取り入れたわけです。

エンパワーメントが成功すれば、事業展開のスピードアップに加え、権限付与を契機にした社員の能力開発にもつながります。

このように国境を超えた競争に打ち勝つための迅速な事業運営と人材教育の両立を狙って、企業のエンパワーメント導入が加速し、それにつれてビジネス用語としてのエンパワーメントが根付いていったと考えられます。

エンパワーメントのメリット・デメリット

エンパワーメントを取り入れるメリットとしては、以下のことが挙げられます。

<メリット>
■スピーディーな意思決定
上司の指示を待たず、現場の社員が判断するぶん、迅速な意思決定が可能になります。

変化へのスピーディーな対応が求められる今、判断の早さは企業の競争力をアップさせます。

■のびのびと能力開花
適度な上司の支援があるため、社員は仕事を任せられるプレッシャーを必要以上に感じることなく、思い切って挑戦し、能力を伸ばしやすいといわれます。

■自ら考えて行動する企業風土の醸成
エンパワーメントで権限委譲が進めば、自ずと社員それぞれが考えて行動するのが当たり前の職場になってきます。

社員が主体的に活動する職場は、課題の解決や仕事のやり方の改善などについての新しいアイデアも生まれやすく、高い成長性が期待できます。

一方で、デメリット(リスク)も考えられます。

<デメリット>
■仕事の品質が低い
上司がサポートしても、社員の能力が予想ほど伸びず、任せた仕事に必要なだけの品質を達成できないケースも考えられます。

最悪の場合、社員が途中でギブアップすることもありうるでしょう。

こうした仕事の不手際は、上司や担当社員の周囲がフォローせざるを得ず、余計な時間や手間がかかってしまいます。

■目標に合わない意思決定
社員の下した判断が、本来仕事で目指すべき目標や、企業が経営を通じて実現したい「企業理念」などに合わないこともありえます。

その結果、他の社員や部署が混乱したり、対外的に一つの組織としてまとまっていない印象を与えたりする可能性が高まります。

エンパワーメントは、メリットを最大限に生かすためにも、デメリットを踏まえた対策を講じながら、取り入れる必要があります。

エンパワーメントの手順と成功のポイント

エンパワーメントを行う際には、仕事を任せる管理職が、仕事を担当する社員の自律性を重んじながら、支援することが重要です。

具体的にどのように進めればいいのか、前述のデメリット対策にもなる「成功のポイント」と合わせて紹介します。

(手順1)任せる仕事を決める
【成功のポイント】社員の能力の範囲、やる気を確認
まずは、どういう仕事を任せるかを決めます。

一つのプロジェクト全体を任せるのか、それとも、情報収集や宣伝・販促など、プロジェクトの一部を任せるのか、社員に担当させる仕事の範囲を明確にします。

ここで大事なのは、「ちょっと頑張れば到達できそう」な仕事を任せること。

ラクにできる仕事では、社員はやる気を失いますし、社員の新たな能力を開花させることもできません。

一方で、能力をはるかに上回る内容では、失敗の可能性が高くなります。

また、もしもの場合の責任は、管理者がとることになります。

委ねる仕事は、自らがフォローできる範囲のものでなければなりません。

この点も頭に入れて、最適な仕事を任せるために、社員本人に会って、努力すればできそうか、やってみたいかを確認してから、仕事内容を決定しましょう。

(手順2)目標の明確化と共有
【成功のポイント】方法は「お任せ」、目標は「指示」
仕事を進める方法は社員に委ねますが、仕事で達成すべき目標は、管理職側を明確に示し、社員と共有します。

こうしておけば、社員に意思決定を委ねても、目標に合わない判断を下すリスクを防止できます。

あらためて企業理念を最確認するのも有効でしょう。

ただし、指示するのは目標のみ。

方法にまで口出しすると、権限移譲になりませんし、社員のやる気もダウンします。

(手順3)仕事の遂行に必要な情報の提供
【成功のポイント】解決方法の提示はNG
社員が正しく意思決定できるよう、判断材料となる情報を提供します。

企業内に類似の仕事の経験が蓄積されていれば、それらについての資料などを渡しましょう。

社員自ら考えて問題点を見出し、潜在能力を引き出せるよう、詳しい解決方法などの提示は避けます。

(手順4)報酬とペナルティを明確化
【成功のポイント】やる気を高め、不安を減らす
エンパワーメントの主な目的は、意思決定のスピードアップと社員の能力開発。

人は、義務感より、強いモチベーションを持って仕事に向き合った時のほうが、より良い結果を出し、能力を伸ばすものです。

モチベーションを上げるためには、任せた仕事の結果が、昇給や昇進などに、どう影響するかを社員にはっきり伝える必要があります。

大事なのは、成功した時の報酬だけでなく、失敗した場合のペナルティについても明言すること。

社員の不安を減らすためです。

一般に、「(成功時の)報酬のみで、ペナルティなし」のほうが、社員は安心してチャレンジできるし、チャレンジに積極的な企業風土も育みやすいといわれます。

もし、ペナルティを設定する場合は、どういうものかを明らかにします。

また、任せた仕事の結果が、他の社員や部署に及ぼす影響も、事前に明らかにしておきます。

万一失敗した場合のペナルティ、周囲への影響が分かれば、仕事を受けることによる社員にとってのリスクもはっきりします。

リスクが明らかになると、必要以上に不安を感じることもなくなります。

社員は、仕事内容、報酬やリスクを考え合わせ、最終的に仕事を引き受けるかどうかを決断できます。

社員が腹をくくれれば、いよいよ仕事を任せることになります。

この記事のまとめ

エンパワーメントとは、「能力を引き出し、自律的にものごとに向き合える力を身に付けさせること。

あるいは、そうした力をつけること」。

また、ビジネス用語としては、「権限委譲」を意味し、「社員の自主性を尊重しつつ支援した上で、社員に仕事を委ねること」を指します。

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