ブレイクスルーとは(読了時間:5分7秒)

企業の成長や技術進化の歴史を振り返ると、必ず成功や発展のきっかけとなる出来事が存在します。

それまで立ちはだかっていた壁を打ち破る「ブレイクスルー」について、詳しい意味や事例を紹介します。

ブレイクスルーの意味

ブレイクスルーとは、既存の課題を革新的な方法で解決することやその解決策のことです。

break throughは「突破する」と訳される英単語で、日本語で「ブレイクスルー」と表現する場合には、表面的な課題に対する改善や改良の繰り返しではなく、本質にアプローチして課題を打ち破ることを意味します。

大きな発想転換が求められるシーンにおいて、技術や常識、システムなど既存の枠組みを根底から覆すブレイクスルーは、イノベーションを引き起こす大きなきっかけにもなります。

イノベーションの中に存在する3つのブレイクスルー

世界ではさまざまなイノベーションが起きていますが、どのイノベーションにもブレイクスルーとなるポイントが存在しています。

「ブレイクスルーのイノベーション理論」を提唱する日本の科学者・山口栄一教授は、ブレイクスルーを3つのタイプに分類しました。

ブレイクスルー:タイプ1

既存技術や知識における研究をさらに突き詰めることで、革新的な発見に行き着くブレイクスルーです。

例えば、青色LEDの発明では「実現不可能」といわれた素材の作製に成功しています。

実験中に偶然目にした不思議な現象をヒントに、素材作成の手法を発見。

その他にも、実用化・量産化に向けて新たな技術を開発し、それまで常識いわれた考え方の枠組みを破壊しました。

既存の研究(知識・技術)を深めた先にブレイクスルーがあり、イノベーションを起こすタイプ1のことを山口教授は「創発」と呼んでいます。

ブレイクスルー:タイプ2

タイプ2は、既存技術の価値を捉えなおし、新たな価値を見出すブレイクスルーです。

既存技術の改良や向上だけでは、将来的に競合他社との価格競争に巻き込まれる可能性があります。

そこで競合との競争を避けるための戦略が必要になりますが、競合を凌駕するような大幅な技術向上や製品開発を目指すには、莫大な投資を行わなければなりません。

タイプ2はその路線ではなく、機能特化や価格面などで新しい価値を提供するトレードオフによるブレイクスルーです。

例えば、半導体大手のARM社(2016年にソフトバンクが買収)は、ライバルがマイクロプロセッサの高速化・高性能化に凌ぎを削る中、高性能化を捨てて低消費電力化を選択し、携帯電話に特化しました。

ARMは設計のみを行うファブレス企業として世界中のメーカーとライセンス契約を行い、モバイルデバイス市場の席巻に成功。

モバイルデバイス市場の成長を背景に、大手企業へと成長しました。

既存技術の追求を回避し、新たな価値を生み出すタイプ2を山口氏は「回遊」と呼んでいます。

ブレイクスルー:タイプ3

タイプ3はタイプ1の創発とタイプ2の回遊を同時に行う、「回遊的創発」です。

基礎研究などの追求と新たな価値創造を平行するブレイクスルーで、衝撃的なイノベーションを引きこします。

例えば、2006年に山中教授が開発に成功したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、ES細胞(胚性幹細胞)の研究が発端となっています。

ES細胞は受精卵を用いるという倫理的な課題を抱えながらも、当時は万能細胞として大きな注目を集め、どの研究所もES細胞の研究に力を入れていました。

ところが山中教授は、受精卵を使わない方法を見つけるという、当時の潮流とは真逆の発想で開発を進めます。

さらに研究過程では「常識外れ」といわれる実験方法に取り組み、万能細胞の作成に成功したのです。

ブレイクスルー:タイプ0

タイプ0は既存技術を改善・改良して行われる商品開発で、ブレイクスルーには至らないものを指します。

当然、改善・改良を繰り返すことによって生まれるイノベーションは存在しますが、最終的には行き詰ると考えられています。

ブレイクスルーを果たすための思考法

ブレイクスルーを果たすような新しいアイデアを発想するための思考方法を「ブレイクスルー思考」といいます。

これはジェラルド・ナドラー教授が1959年に提唱した問題解決法である「Work Design」をもとに発展した概念で、日本では翻訳本やトレーニング方法を解説した書籍などが発売されています。

現代社会における変化の速度は非常に速いため、過去の延長線上には未来がないという前提に立って考える点がブレイクスルー思考の特徴です。

改善手法として有名なトヨタ式が、原因を追究するために「なぜ」を繰り返すのに対し、ブレイクスルー思考では原因(過去)に目を向けるのではなく、目的(未来)に目を向け「何のために」を追求します。

成功・失敗事例から着想するのではなく、未来のあるべき姿を起点に目的を問い続けることによってアイデアを生み出す思考方法として知られています。

ブレイクスルーの事例

ブレイクスルーは分野を問わず、発展や成長の過程で起こります。

ブレイクスルーの事例や、今後ブレイクスルーが期待される技術をいくつか紹介します。

医療技術のブレイクスルー:メッシュタイプの導電性ポリマー

伝導性ポリマーを脳に移植し、脳内の活動をモニタリングする研究がハーバード大学で行われています。

電子素子をもつメッシュを注射によって脳に移植し、脳内の細胞に浸透させることで、脳の働きを解明しようという試みです。

現在は16個の電子素子を保有するメッシュをマウスの脳に移植する実験が行われていますが、5週間に渡って拒絶反応が確認されておらず、さらなる実験が期待されています。

電気素子を増やし、広範囲に渡って脳に浸透できるようになれば、難病に分類される神経系疾患の原因究明や治療法の開発に役立つほか、脳への理解も一層深まると考えられることから、技術が確立すれば医療分野に大きなブレイクスルーをもたらすでしょう。

医療技術のブレイクスルー:カプセル型のペースメーカー

英国の医療機器メーカー・メドトロニック社は、外科手術を行わずカテーテルによって直接心臓内に送り込んで設置できる、超小型のペースメーカーを開発。

欧州、米国での薬事承認に続き、日本においても世界最小のペースメーカーとして2017年2月に薬事承認が行われました。

従来のペースメーカー手術では合併症のリスクがあるほか、縫合跡や設置した装置の膨らみなど外見上の課題も患者にとって精神的な負担となっていたため、これらがすべて解消される超小型ペースメーカーの登場は、大きなブレイクスルーといえるでしょう。

自動車業界のブレイクスルー:電気自動車

アメリカのシリコンバレーを拠点とするテスラモーターズは、後発の自動車メーカーとして誕生し、2008年にスポーツカー仕様の電気自動車「ロードスター」を発表。

高額ながら人気を博し、誕生からわずか数年で電気自動車の代名詞といわれるまでの存在となっています。

日本の自動車メーカーによる電気自動車も改良が重ねられ、ようやく普及し始めていますが、日本で電気自動車がブレイクスルーするためには蓄電池や電源の性能向上が不可欠といわれており、現在も各社が凌ぎを削って研究を進めています。

ブレイクスルーは、偉大な発明や技術革新などとともによく使われる用語ですが、実はそれだけではなく、どの分野においても発展や成長の過程に必ず存在するものです。

興味のある分野や企業があれば、現在に至るまでにどのようなブレイクスルーがあったのかについて調べてみるのも面白いかもしれません。